シンポジウム 日本の医療が危ない 06/11/05

    春田 明郎 横須賀中央診療所


 11月5日東京日比谷の星陵会館で、講演とシンポジウム『日本の医療が危ない』−真に国民のための医療とは を開催しました。会場には医療・福祉関係者、行政関係者、一般参加者など約200名が参加されました。


 最初に地域医療研究会の鎌田實代表世話人が講演しました。
 鎌田世話人は「日本の医療が土俵際にいると思い今回こういう会を主催した。僕の家は貧乏で国民皆保険制度がなかったために病気を持っている家族が入院出来なかった。その後国民皆保険制度が出来て大変楽になった。国民皆保険制度というのは非常に優れた制度だ。救急医療や高度医療などの攻める医療だけでは問題は解決しない。助からないときも暖かく最後まで痛みを感じずそのがその人らしく生きれるように支える医療が大事だ。今、かなり厳しい状況の中で病院の医療は行われている。年間32兆円の医療費が使われているが2年後の医療費改定には約2兆円の上乗せをし、日本中どこでも世界のスタンダードな癌医療ができ、子供が安心して医療を受けられ、在宅医療だと緩和医療の充実する3つの提案をしている。」と問題提起しました。

 権丈善一慶應大商学部教授は、『小さすぎる政府の医療政策』と題して講演されました。
教授は「医療費を増やすしかもう手はない。これほど問題の方向性、解決の方向性がある程度できあがっている問題というのはない。医療を変えたいのであれば、医療費を増やそうとしない政党には拒否権を発動するしか方法はない。」と最初に一番言いたいことを言われました。民主主義と政策形成について、「選挙は沢山の政策の束で争われ、アイディアが勝敗を分ける。」と分析され、日本医療の現状について「病院勤務医と開業医が分断支配されている。医学部入試の高偏差値は格差を再生産してる」と指摘されました。大きな政府と小さな政府について「高福祉は経済性成長の障害になると言う証拠がない」ことと、「スウェーデンは小さな国だから管理が行き届いているため高福祉国家になれるというのは誤り。貿易依存率が高く、均質が労働者が組織化され、小さな国故、不況の時賃上げを先送りして、景気回復時に社会的賃金として福祉を受け取るようにしてきた。」と政府の高福祉国家論の誤りを指摘し、日本は「小さすぎる政府」と表現されました。「アメリカは福祉を市場に依存し、スウェーデンはは公的に供給し、日本は家族に依存している。日本はアメリカよりスウェーデンを目指すべきだ。」と話されました。また、「政府は階層消費を回避し、平等消費を実現するため社会保障を通じて所得の再分配を行う必要がある。」との見解を示されました。社会保障の財源については「軍事費など他のところから持ってくるのは難しい。消費税も再分配すれば累進的になるから、税を増やせばよい。」とした上、「選挙で間違った選択をしないよう」最後にもう一度強調されました。

 午後のシンポジウムは佐藤敏信厚生労働省医政局指導課長、中医協の委員である勝村久医療情報の公開・開示を求める市民の会世話人、鈴木厚川崎市立井田病院内科参事、やはり中医協委員の石井暎禧石心会理事長のシンポジストに、権丈教授も参加され、鎌田世話人の司会で進められました。
 OECD先進諸国に比べ、GDP当たりの国民医療費も、社会保障費も、患者一人当たり医療費も日本が少ないことや、病院医師が過労であり、病院も大変である実態が示されました。医療事故については20年前と変わらないひどいことが未だに行われることがあり、情報の開示が重要だと報告されました。

 フロアからは、新しい老人医療制度で、扶養されていた老人が75歳から保険料を徴収されることへの疑問や、医療費の財源として一般財源より多額の特定財源が充てられないかという意見などが出されました。