「介護保険制度見直しを検証する」

              北村俊幸( 株式会社ニチイ学館取締役介護事業担当)


訪問介護事業において営利企業は約半数の48%シェア率となっており、年間の伸び率、新規参入の殆どは民間事業者の参入です。特に参入顕著な痴呆対応型共同生活介護は5000箇所を越えており、74%を民間が占めています。すでに都市周辺部の埼玉、千葉県等は飽和状態で設置許可が中々得られない状況となっています。介護保険制度施行当初に言われた「保険あってサービス無し」というサービス供給量の不足を民間企業の参入は自らの努力によって拡大、賄ってきたという実績を評価いただきたいと考えます。
 最近、審議会や調査委員会などで民間企業は「儲けすぎだ。介護ビジネスで膨大な利益を上げている」とか「高齢者を食い物にしている」などと言われることがあるようです。私共は出資いただいている株主や事業の次なる投資のためにも利益が必要です。また、適正な利益を追求しているだけで、何もこの福祉事業でぼろ儲けしようなどとは思っていません。また、現実的に無理な話であります。皆様もご存知の通り、数パーセントの営業利益が出ればよい方です。当社は平成8年からヘルスケア事業、介護事業に参入し、介護事業のみの事業収支は累積でマイナス158億円となっています。要は158億円をある意味で介護保険制度の円滑な推進に投資した、貢献してきた訳です。それを儲け過ぎなどと言われるのは誠に遺憾であり、逆に誉められることであってもいいのではと思う次第であります。
さて本日の本題、介護保険制度見直しにつきましては先ずは介護予防の導入による軽介護者の介護給付を制限、カットすることについて「介護予防だけで在宅介護生活が送れるか」いうことです。「介護」は、身体が不自由になっても、環境の側を変化させ、環境を身体に適応させることで、日常の生活機能を維持し、主体的な生活を可能にする支援行為であります。「医療」が、身体を環境に適応させるものであるのに対して、「介護」は環境を身体に適応させるものであると考えます。軽介護度の利用者に対する生活援助サービスは、自立支援の観点から、大変重要な介護サービスであります。また、介護予防と介護給付についてのケアマネージメントは一貫性・連続性のある総合的なシステムとして2つの実施主体となるようなことはせずに、構造を複雑にしないことが重要と考えます。
次には介護サービスの担い手(ホームヘルパー等)を、資格要件等で規制強化し、介護福祉士等によるサービス供給市場の独占をすることにも反対であります。サービスの質を高めるために、任用資格条件等を強化することだけで質が高まるという考えは理解できません。また、サービス供給の担い手となっているホームヘルパーの就業機会を制限、排除する手法は、「規制の論理」であり、納得できません。いま、介護市場に求められているのは、「量から質へ」という規制的な発想ではなく、「量が質を高める」という、市場原理の発想だと思います。介護は、まさに、「日常・生活サービス」であり、十分な量と多様性の確保こそが基本的に重要であり、介護現場の現実は、ホームヘルパーはまだまだ不足しており、需要に応じきれない地域もあります。こうした現実を無視した量から質への主張はまさに机上の空論に近いものであります。
 市町村が、民間による「小規模・多機能型サービス」事業の事業機会を、指定拒否等によって制限することができるとする規制強化案には反対であります。多様なサービス形態は、官製ではなく、高齢者介護市場のニーズに基づいて出現しつつあり、民間事業者の柔軟な発想や創意工夫が活かされ、競争的な発展が期待されている領域でなければなりません。厚労省案では、「地域密着型サービス」については、市町村が主体的な対応をとることができるよう、市町村長が事業者の指定・指導監督を行うとともに、市町村が介護保険事業計画に定めたサービス整備量を超える場合には指定拒否できる権限を市町村長に与える規制の網をかけようとしています。このような参入規制は、利用者本位の下で、競争を通じて効率的にサービスを提供していく基本政策に逆行するものであると考えています。
 以上のように今回の介護保険見直しは大きな制度の転換と2025年の超高齢社会を迎える喫緊の課題に対応するものと理解しております。しかしながら、どうも制度の持続性の確保といいながら財政難、財源削減を後ろに隠した新介護予防給付強化であることがちらついていますのを見逃すことは出来ません。もっと解り易く、すべての国民が納得できるるような全体の社会保障、介護保険制度のグランドデザインを再度示しながら国民の理解を得ていくことが必要かと感じております。
 時間も参りましたのでこれで終わらせていただきます。ご清聴有難うございました。

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