地域で生きることが可能な介助保障制度を
斎藤まこと(名古屋市議会議員)
午前中の講演の中で中村局長が「現在の厚労省の中では制度を良くしようという議論はない」と断言されたことはショックであり、頭にきています。じゃあ私たちは何を提案すればいいのだと思うからです。厚生労働省はこの10月12日に「改革のグランドデザイン(案)」を発表し、障害者保健福祉施策を応益負担が基調とする体系へと変えようとする提案を示しました。 これは今回見送られた被保険者の範囲の拡大、つまり介護保険と支援費の統合を次の介護保険見直しの時には実現するための準備の改革であるといえます。もちろん統合反対という意見が多くある中で厚労省はこのような案を出さざるを得なくなったともいえ、統合反対が結果としてグランドデザインを生んでしまったという側面があるのです。この案では施設利用料や食費を自己負担させるなどの内容があり、ホテルコスト論と介護予防という名の下に給付の制限を行う今回の介護保険の見直しと軌を一にしていることは明らかです。そしてこのグランドデザイン(案)に基づき来年の国会に「障害者福祉サービス法(仮)」という法案を提出したいというのです。このような重大な局面を迎えたものの議論に割ける時間は限られていますが、就労の機会を奪われ所得保障がされていない障害者に応益負担を強いることの問題などを積極的に訴え、このグランドデザイン(案)の問題性を広く訴えていかねばと考えています。
一方、これらの「改革」が進む中で、私はどんな障害を持っていても地域で生きることのできる介助制度を構築するために介助をめぐる基本的な問題をいくつか考えてみたいと思います。まず、自立概念の問題です。介護保険で言う「自立」は他人の手を借りなくても自分でできる状態のことを言います。しかし、障害者の自立というものは、自立するためには他人の手をたくさん借りないと実現しないという考え方に立脚しています。
こんな例もあります。支援費制度が広がる中、各地で起きたいわゆる「プール問題」です。障害者と一緒にプールに出かけた場合、介助者が障害者と一緒にプールに入る行為は支援費のヘルプの対象ではないというのです。つまり、従来のホームヘルプの業務範囲に縛られ、プールに入るのは危険な行為だというのです。しかし介助者がプールサイドで障害者が入っているのを見ているのは「見守り」として是認されるというのです。もちろん競馬場へ一緒に付いて行くなどというのは社会的に妥当でないとされています。この生活実態からかけ離れた考え方が今の介助制度の根本に存在しています。
普段24時間介助が必要な障害者が病院に入院した場合はもっと大変です。現在の医療制度では完全看護が建前なので有料の介助者が患者に付くことができません。しかし24時間介助が必要な人はすべてのことで他人の介助が必要です。看護婦や病院側のスタッフでは対応できないし、まして慣れた介助者じゃないと介助できないというのも現実です。社会保険庁は、完全看護の診療報酬の中で病院が対応するようになっているというばかりです。入院していてもしていなくても必要な介助なのに入院した途端に認められないという深刻で矛盾した問題なのです。
これらの例はいずれも障害者が地域の中で生活をするという実態と制度がミスマッチを起こしているのです。私はこのような日常の中で生じている介助をめぐる問題群の中にこれからの介助保障制度を考える課題が存在していると思いますので、ここで述べたような問題解決を着実に行っていく必要があると考えています。また応益負担論、コスト論が幅をきかし始める中で、税金で提供すべきサービスの範囲というものは一体どこまでなのかというような根本的な議論も行わないとナショナルミニマムとかセーフティネットなどという言葉が虚しく響くだけの世の中になります。そうならないための議論を幅広く進めていかねばと思います。
トップに戻る