介護保険法改正案の国会審議を通して

    〜特に新たな「介護予防」の導入に関連して留意すべき点について〜


               参議院議員 朝日俊弘
                     (
厚生労働委員会 所属)

1) 今回の改正で介護保険法の中に「介護予防」のメニューが制度化されること(地域支援事業としての介護予防サービスと新予防給付)は、必然的に現行の老人保健法に基づく40歳からの老人保健事業(医療以外のヘルス事業)の在り方の見直し問題に繋がる。何故なら、従来の生活習慣病予防対策を中心とする保健事業に盛り込まれていたサービス・メニューと、新たな介護予防サービスの内容とは相当部分がオーバーラップするからである。
   一方、老人保健法に基づく70歳からの高齢者医療のための老人保健制度も、その抜本的な見直し=新たな高齢者医療制度の創設が来年(2006年)の通常国会に提出される予定となっており、老人保健および老人医療の両者を統一的に定める「老人保健法」は、その存廃をも視野に入れた法改正を想定しておかねばならない。

2) 従来の介護保険法では、要介護状態となった原因(理由)には、あえてこだわらずに、ある時点で必要な介護サービスの量を介護に要する時間(○分)という物差しで測り、その時間量を基準に要介護度を判定する考え方を採用している。
そして今回の改正では、「介護予防」の考え方を導入したことで、とりわけ介護予防のためのアセスメントでは、過去にどのような要因があり、そのため現在の要介護状態になり、そして今後どうすれば状態の改善が図られるか(あるいは状態の悪化が防止できるか)という、横の時間軸を加味した評価が必要となる。
それは別の言い方をすれば、従来の“生活モデル”重視から、“医療モデル”あるいは、“疾病モデル”への軌道変更を行うことに他ならない。そのことが介護サービスの質に歪みをもたらすことがないよう、充分に留意していかねばならない。

3) 上記の問題意識とも関連して、改正介護保険法がより良く機能し運営されていくか否かの鍵(キーポイント)は、保険者である市区町村が新たに設置・指定する「地域包括支援センター」の実質的な中身が最も重要となる。
さらに、その地域包括支援センターの機能と役割を支援・サポートできるような、それぞれの地域、それぞれの自治体レベルにおけるシステムづくり(連携のための連鎖)が必要となろう。

  そもそも介護保険は、従来から制度化されていた老人福祉事業および老人保健事業と老人医療制度に基づく各種のサービスの中から、最も不充分であった“介護”の部分に着目し、その介護サービスを社会的に提供するための「公的保険」として創設された。
  従って、高齢者の生活全体を支援するための多様な施策・サービスは、介護および介護関連、さらにその周辺のサービスを統合的・包括的に活用して、はじめて可能なのである。であるからこそ、冒頭に述べた老人保健法の見直し問題は、ますます重要な課題として浮上するであろうし、こうした法制度改正の荒波の中で、中心的な実施主体である市区町村はどのように対応していくべきか、改めて市区町村の役割が問われることになろう。