10・9 介護予防シンポジウム「施設における介護予防の取り組み」
「生活モデルから医療モデルへの転換」の制度改革
特別養護老人ホームせんねん村施設長 中澤 明子
18年4月からの介護予防・新予防給付の導入では、入所施設にとっては余り影響を受けることが少ないように見える。しかし、通所介護や訪問介護などの事業所を併設している多くの事業体にとって、かなりな波乱が予想される。
まず、これまでの要介護1は一種類だったが、要支援2と要介護1の2種類に分けられるようになる。これをすんなりと利用者に理解していただけるかどうかが心配なところである。これまで要介護1だった方はそのまま同じサービスを継続して受けることができるとされているが、半年に1回の認定更新で、介護度が改善されていたらどうなるのか?新たに認定された人は新予防給付、「これまでサービスを利用していた人はこれまでどおり」となればなったで、「なぜ、あの人は?」ということになりはしないか。そして、もし新予防給付に移るとなれば、それまでのなじみのケアマネージャーではなく、地域包括支援センターで予防給付マネジメントを受けることになる。そのケアマネがこれまで蓄積してきた、その方の生活全般を支えるためのデータは雲散霧消して、「初めの一歩」からやり直しである。
介護予防マネジメントを行う地域包括支援センターに関しては、「人口2〜3万人に1箇所設置」といわれ、設置数のイメージとしては在宅介護支援センターに近い。人員基準はより専門性が高い職種の配置が義務付けられていて、アセスメントから始まり介護予防のプラン、サービス利用、再アセスメントというPDCAのサイクルを回すことになってはいる。しかし、たとえば、保健師の採用が簡単にできるとは思えないのが、当地の厳しい現実である。
地域によって異なるとはいうものの、地域包括支援センターは社会福祉協議会が受託するところが多いように聞いている。基幹型在宅介護支援センターを受託しているところに、包括支援センターも委託するだろうということは容易に想像できる。これが果たして利用者中心の視点でよい動きをしてくれるかどうかとなると、疑問視する地域が多い。残念ながら、将来の地域ケアに関して懸念を強める結果となっている。ところによっては、包括支援センターから在宅介護支援センターに委託するなどの案も出てきているが、これなど事務処理を複雑にするだけである。事務コストが今以上にかさむことになるだろう。
一方では、新予防給付・介護予防関連だけでなく、入所施設運営側からみると、10月1日から導入された食事代全額自己負担に伴っての加算条件に、今回の制度改革の風潮がはっきりと表れている。
それは、生活モデルから医療モデルへの転換である。いや、居宅介護支援専門員が介在することで、生活モデルが重視されるようになったこの5年の取り組みであるのに、これらのアセスメントからして、全くの医療モデルに逆戻りしているという感想をもっている。
施設入所者の低栄養状態が問題になっているが、当施設では、全食事量を摂っておられても低栄養状態が改善されなかった方を経験している。他の入所者はそういうことは起きていないから、やはりその方の吸収力が低下していたとしか思えない。当施設に入所された方は、栄養状態が改善されて、介護度改善もしくは症状が改善される方が大半である。しかし、今回提示されている栄養アセスメントや嚥下アセスメントは完全な医療モデルである。
EBMを重要視するという論理も理解しないわけではない。しかし、EBMではQOLは計れない。特に高齢者に関しては、検査数値だけでは計り知れないものがあることを見落としているように思えてならない。高齢者にとって必要なものは、QOLである。普段はお粥の方が、握りずしならパクリと食べられる現実がある。刻み食の方が、トンカツなら刻まないで食べられる事実がある。これらの良反応が造影剤で計れるとは思えない。検査機器が進歩して、これらも明確に計れるようになっているとしたら、教えて欲しい。造影検査で喉の障害などを発見し、それを治療することで嚥下が改善されるとしても、美味しくないものを食べさせられたら食欲は減退し、結果として低栄養になるのではなかろうか。現実の介護の現場で、まだまだ人格無視と思えるようなサービスが提供されていることの方を注目するべきであろう。
医療・福祉は生活に出会えるか?これからの日本では、本人があらかじめ事前指定書で意志表示しておけばEBMの明らかでない医療は受けないことができるようにするなど、海外では既に当然のこととして行われている高齢者医療のEBMの確立と、高齢者の生活と自己決定の視座をもって、施策を講じることが必要だと思えてならない。