地域包括支援センターと介護予防について

 〜求めているものは何?現場の混乱と疑問〜

                      和田 節 あったかケアみずき施設長


 平成12年の介護保険制度スタートと同時並行的に、制度の浸透性や利用状態を分析する作業が行われてきました。その作業経過の中で、平成15年6月に「2015年の高齢者介護」や平成16年1月には高齢者リハビリテーションのあるべき方向についての提言が出されました。 
 それらを受けて平成16年2月に介護予防重点推進本部が設置され、平成16年7月には新予防システムの概要が示され、介護保険制度の見直しに関する意見の集約へとつながっていきました。

 背景には急速な高齢化・独居高齢者の増加・認知症の増加・要介護者(軽度)の増加といった社会現象に対し、介護保険制度の持続可能性をどう保証していくかを最大の課題とした取り組みが始まったと思われます。施設介護に関しては今年の10月から制度改訂がありました。在宅での介護支援構想も地域包括支援システムとして「1015年高齢者介護」の中に今後のありようが示されました。そこでの中心的な構想は「住み慣れた地域で・リスク(ハンディキャップ)があっても・最後まで・安心して・安全に・自分らしく(尊厳を保って)暮らすことができるシステム」を作っていくことだったと私は受け止めていました。

 そうした地域包括的システムが起動するには、継続的な支援の提供体制をどう作っていくのか(変化に対応した継続的なサービス・ターミナルまで在宅で支える医療を含めた他職種の365日24時間の安心の提供)と包括的な支援の提供体制をどう作っていくのか(介護保険外のさまざまな社会支援を要するケースへの対応や多職種協働.住民参加のボランティア組織のネット化等々)が必要であると提示されていたと理解しています。そしてそれらを行う機関として地域包括支援センター構想が示されましたが、介護保険財源及び国の一般財源の緊迫した状況化で三位一体政策が推し進められ、今まで単独事業として行われていた様々な事業が整理され、老人保健事業や地域支え合い事業、介護予防事業、在宅介護支援センター運営事業に新たな事業として介護予防マネジメントと新予防給付に係る一連の事業が地域包括支援センターの事業として合体統合されました。

 しかし、今進められている作業過程をみますと地域包括支援センターは地域支援事業とは名ばかりで、介護保険予防管理事業に事業の大半が費やされ「2015年の高齢者介護」でうたわれていた地域や包括支援の展開については何も見えてきません。
 又、地域包括支援センターの重要事業と位置付けている介護予防事業に関しては、何をしようとしているのかがハッキリしません。進めようとしている予防の概念の不鮮明さがあります。
 要介護状態の原因に対しての予防なのか、介護の重度化の誘因に対しての予防なのか。何に対して何を予防するのかが定かではありません。にもかかわらず、国は予防事業の期待効果を地域支援事業で20%・新予防給付事業で10%と数値で示しています。

 軽度の要介護者の重度化の原因として下肢機能の低下や栄養状態の悪化があると言われていますが、即そこに結び付けていいのかどうか、むしろ他に検討しなければならない要因があるのではないかと考えます。私共の通所リハビリを利用している方の2年間を追跡しましたが、介護度の悪化の要因は認知症の進行や原疾患の悪化(再発や合併症)によるものでした。別の資料でも介護認定軽度者の重度化要因には@疾患A認知症B加齢が背景にあると紹介しています。

 これらから考えても、予防事業を進めるならば健康管理の側面から、今までの老健事業や集団健診(職場健診を含む)が予防につながるマネジメントに活用されて来なかった事等をきちんととらえ直す必要があるでしょう。そうした観点から、今進められようとしている介護予防事業をみてみますと、介護予防アセスメント一つにしても多いに疑問があります。アセスメント項目を見ても何故これが予防につながるのか理解に苦しむような項目、例えば「候補者を決め投票しているか・家族や友人のことを心配したり相談にのっているか・良好な親子、兄弟、親類関係を保っているか」等々の生活者の思考調査や個人の価値観までに及ぶ内容を見るにつけても、これを全国一律の様式でやろうとするのは、住民の生活管理システムを作ろうとしているのではないかと疑ってしまいます。一体、何を目的にしているのかがサッパリ分かりません。

 又、低栄養の問題が大きくとり上げられていますが、もしも日本の高齢者に低栄養を問題としないといけないような状態が発生しているとするならば、これは社会問題としてとらえていかなければならない性格を有していると思います。
通常、今の日本社会で低栄養を問題にする場合は、先ずは疾患との関係性を見ていくでしょうし、本人の生活スタイル(認知症や独居や過疎地での生活等)や本人の経済的な問題等から検討を始めるでしょう。生活者の背景には一切かかわらず、低栄養→低栄養教室といったケアプランが示されたりすると、やはり予防の概念が不鮮明であるとしかいいようがありません。社会的な視点の欠落した予防プランは地域包括支援の構想そのものから大きくかけ離れたものになってしまうでしょう。

地域包括支援センターは果たして機能するのでしょうか。今の状況で判断する限りにおいては、地域包括支援センターに包括支援の構想は見えず、ひたすら予防管理と予防事業の展開に終始し、しかも予防の概念は未整理のままで、管理システムが全てに進行する形で進められているように思います。

又、地域包括支援センター事業にかかわる関係者の関心は、事業内容や展開の仕方に疑問を持ちながらも、国の路線に乗り遅れないように対応することで精一杯の様子です。
ましてや地域住民にとっては、何も知らされてないといっても過言ではない状況化に置かれています。今年の10月からの介護保険施設の利用料金の改訂同様、制度に従うのみです。
地域包括支援センターの構想を、しっかりと地域に根をおろした住民福祉の視点を持ったものにしていくにはどうあるべきか。地域包括支援センターに限らず、年金、医療、介護といった社会保障制度についての論議に参加し、論議を深めていく必要を痛感しています。但し、今の国の制度改革は参加の余地もない形とスピードで物事が決まっています。

*11月7日までに「地域支援事業に関する費用(見込み)」を都道府県を経由して老健局介護保険課に提出するようになっています。論議の時間も場も保証されていません。