“新臨床研修制度を検証する”
      コーディネーター 

        宮本 真理夫(諏訪中央病院)


 2004年4月より新医師臨床研修制度がスタートしました。卒後医師臨床研修が努力規定から、2年間臨床研修指定病院での研修必修化へと義務づけられました。また、研修の基本理念として、医師としての人格の涵養がうたわれ、臨床研修の到達目標として、プライマリ・ケアの基本的な診療能力の習得となっております。新臨床研修制度の発足に伴い、研修の場は、大学病院71%→55%、市中病院28.8%→44.1%へと、大学から市中病院へ大きくシフトしました。大学医局への直接の入局はなくなり、ストレート研修も不可となり、一線の病院での総合的な研修が大きな潮流となってきています。しかしながら実に36年ぶりの制度改定であり、いろんな問題点も噴出してきています。研修の質、指導医の温度差、時間、経済性、精神的フォロー、医師偏在、大都市大病院隼中、医師供給体制の崩壊、後期臨床研修等々、問題が山積みしています。
 いい医療を展開していくためには、いい医者が必要です。21世紀の日本の医療を展開する際、医師臨床研修は、最重要課題と考えられます。新臨床研修制度が1年を経ようとしている今、″新臨床研修制度を検証する″と題して、いろんな立場の人達から、現状分析をしていただき、この1年の実態、評価、問題点の抽出、提言をお願いしました。
 厚生労働省から医政局医師臨床研修推進室長・宇都宮啓氏、研修医の立場から佐久総合病院研修医・橋本梨佳子氏(宮崎医大出身)、大学の立場から東京医科歯科大学総合診療部助教授・大川淳氏、地域中核病院の立場から諏訪赤十字病院副院長・大和眞史氏、診療所の立場からあおぞら診療所上本郷院長・川越正平氏、以上5氏をシンポジストとしてお招きし、新臨床研修制度を検証していただきました。
 シンポジストの発表は、それぞれ各自にまとめていただきましたので、それを参照してください。筆者の印象として、宇都宮氏:研修必修化への流れの経過と現状説明と分析をしていただき、国は研修に力をいれていると。医師のキャリア評価は「どの大学(医局)の出身から」→「どの卒後臨床研修プログラムで研修したか」と変る。そして、この卒後研修は保健医療界全体で研修医を育てるシステムです。是非皆様のご協力をとのことでした。橋本氏:研修病院を決めるにあたっての問題点と、この1年間の研修内容を提示し、医学生研修医に対し、自分のなりたい医師像を一緒に探していきましょうとのアピールでありました。大川氏:大学病院でのこの2年間の取り組みと現状を説明していただき、大学病院での臨床研修の問題点を認識しつつも、大学の研修に対する責任と誇りを表明。大和氏:自分史に重ね合わせながら、研修の現状と問題点を明晰に分析し、若手医師を病院の中で大切に育てる文化を、研修医を育てることによってよりよい病院へと変えていくと熱く語っていただきました。川越氏:若手医師の会としての長年にわたる研修問題への取り組みと提言をしていただき、地域で医師を育てることが重要で、研修医受け入れは、医療の密室性を打破し、診療実践の検証となりえると。さらに、地域病院の屋台骨を担う人材の養成や患者、研修医、研修病院のすべてが得をする展開にと、有意義な提言をしていただきました。
 後半の議論で、後期研修について厚生労働省は、後期研修を義務化することは考えてないとの態度を表明しました。初期臨床研修は学校の義務教育と同じ、その後の研修は自立した各自の大人の対応として、個人に任せるとのこと。卒前臨床教育、初期臨床研修、後期臨床研修の間で連結性をもったカリキュラムの調整は必要であろうと。大川氏は大学としては、専門医を育てる後期研修を考えている。また大和氏より大学院大学の定数の多すぎる(5000人)点が問題であるとの視点を提供されました。川越氏よりは、専門医養成コース、病棟医長養成コース、診療所長養成コースと多様な研修をと、さらに医者は生涯学習が必要とする。
 医師供給体制について:厚生労働省そのものは国として体制づくりは考えていない。都道府県に任せる。大学の医局は、医師供給の組織としては望ましくないのではと。しかしながら診療科、地域の医師の偏在化は問題として捉えている。2月25日に″医師需給検討会″を立ち上げ、国として議論を始めたところであると、また都道府県で″僻地医療対策協議会″を設けることになっており医師のプール制等、医師全体をどうするかをこの会で協議することになっているとの情報を提供していただきました。大川氏は、医師のリクルート会社の進出が急であると危惧が表明され、川越氏も市場原理に任せると今の医師の偏在化が加速されると意見も出されました。大和氏はこの医療制度の流動化の中で、病院のスタイル、医師の流れも変らざるを得ないが、またその型は見えてこない。見える範囲として、県全体の進路相談、支援体制が必要との意見でした。
 
 新体制発足1年の時点での議論としては、よく考察され、吟味された検証がなされたと思います。今後もこの新臨床研修制度をよりよいものにするため、いろんな立場の人々から種々の提言を受け、厚生労働省、大学、一般の医療現場、また医療を受ける国民がお互いにきちんとキャッチボールをしながら制度づくりをしていきたいと考えます。この問題に関しましては、地域医療研究会としても、継続して取り組みたいと考えており、2005年もシンポジウムを開催するつもりですのでよろしくお願いします。

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