新臨床研修制度1年を振り返って
     ―大学病院の立場から
大川 淳(東京医科歯科大学医学部附属病院総合診療部) 


大学病院研修プログラムの理念と現状

 東京医科歯科大学の研修理念は、専門医になるために必要な基本的な診療能力を身につけることである。新臨床研修制度になり、従前よりも30名程度が減員となったため、たすきがけ研修を基本として研修設計にさまざまな工夫を行ってきた。
まず、初期研修では臨床医療全般にわたり広い視野を持つ機会を与えることを目標とした。大学病院の三次医療、協力病院である地域中核病院での二次医療に加え、地域保健・医療分野ではプライマリ・ケアを積極的に行っている診療所に派遣し、一次医療の先端までをボーダーレスに経験させる。
研修評価にはEPOCを利用している。インターネットを通じて、場所と時を選ばず評価の入力が可能である。また、指導体制を研修医側から評価することにより、研修プログラムの改善にも役立つ。今後は修了認定において研修記録の提出も予想されることから、逐次研修状況を管理部門が把握することが大切と思われる。

大学病院における臨床研修の問題点と対策

 大学病院での研修においてはいくつかの問題が指摘されている。まず、common diseaseが少ないのでは、という点である。しかし、EPOCを用いた平成16年12月までの途中集計では、たすきがけの協力病院との比較でむしろ大学病院研修医の経験は豊富であった。このデータはEPOC入力の進捗具合に影響されるが、大学病院ではcommon diseaseが極端に少ないとはいえないようである。また、救急症例に関しても同様であった。ただし、外科レポートなど、両者とも入力が少ない分野もあった。

 労働時間に関しては、これまで旧来の国立大学病院のスタイルから脱却し、研修医の雑用を可及的に軽減するために、病棟クラークを導入するなどの院内改革を推進した。加重労働がもたらす心理的な変調については、採用時と半年後に独自の心理テストを行い、注意深く観察している。さらに、2年間の研修期間を通じて、研修医からの苦情や相談を受け付ける担任制度を設けた。担任医師は定期的なヒアリングを行い、研修医からのファーストコールを受ける。それでも年間数名の研修医が一時的な研修中断を余儀なくされている。研修中断後には再び就労可能となることが多いが、研修プログラムを変更す(ほかの病院に移る)こともある。この現象はドロップアウトというよりも適応障害と思われ、ねばり強い対応が必要と考えている。

 最後に後期研修の問題がある。大学病院の最大の特徴は、専門研修や大学院における研究など、幅広い進路選択の余地を持つことである。シンポジウムでは時間が不足して十分な議論ができなかったが、我が国の今後の臨床医療の担い手の確保に関して、プライマリ・ケア、専門医療を問わずさらに議論を深める必要がある。

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